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またまた期間があいてしまいましたが、電車学パロの番外編その3です。懲りずにまだ続きますw
それにしても前回更新した話とのテンションの差が……\(^o^)/ギャグは難しい事を考えずにノリで書き進める事が出来ていいですね!
あと2話で完結予定なので、ゆるゆるとお付き合いお願いします~(*´▽`*)


ところで、ルキルカ兄妹って……良いと思いませんか!(じゅるり)




 改札口から吐き出される人の波を、俺は券売機横の空いたスペースからぼんやりと眺める。目の前を通り過ぎる人たちから投げかけられるのは相変わらず奇異と興味に満ちた視線だ。……そう、奇異の視線。何で俺がこんなものを向けられなきゃいけないのかというと―――…

「……あ!クオ、あれレン君じゃない?ほら、あそこのベンチに座っている――」

 キラキラと顔を輝かせながら改札向こうに見えるホームを指さす少女、ミク。
 全ての原因は、彼女にあった。


下準備は苦労がいっぱい


 そもそもの話は、2日前へと遡る。
 「とっておきの策」とやらを自信ありげに提唱するミクの顔を、俺は呆然と見つめて―――…

「……えーと、ごめん。もう一回言ってもらっていい?」

 がっくりと頭を抱えた。
 俺の反応があまりにも薄かったからか、ミクは不服そうに頬を膨らませた。にわかには信じられないけど、すんなりと賛同を得られると思っていたらしい。……何でだ。

「だーかーらー、変装だってば!クオ日本語ちゃんとわかってる?」
「いやそういう意味じゃなくて。……あのさミク、念のために確認しておくけど、変装ってどうやってするつもり?まさか眼鏡かけてカツラ被るだけとか、そんなおかしなこと言わないよね?」
「なにその古典的な方法。却って怪しいじゃない」
「俺はミクの策自体が怪しいと思うんだけど。……成功確率的にも」
「失礼ね!ちゃんと手は打ってあるわよ。頼りになる協力者も用意してあるし、クオは黙って私についてくればいいの!」

 尚も自信ありげな彼女の様子に、ちょっぴり……いや、かなり不安になったのだけど(そもそも「協力者」って誰だ?)、他にどうする事も出来ない。俺は渋々頷いて、とりあえずは彼女の提案を呑むことにしたのだった。


 その結果が「これ」だ。


 道行く人が訝しげに眺める理由はちゃんと分かっている。問題は、俺たち――いや、俺の格好にあった。寧ろ俺にしかなかった。
 顔半分を隠すほど大きなサングラスに、がっちりセットされたオールバックの髪型。てらてらと光るイミテーションの皮ジャケットは着心地が悪く、首や腕にぶら下げたアクセサリーの類がじゃらじゃらと鬱陶しい。俺の趣味とは遠くかけ離れたこのコーディネートは、どこからどう見ても素行の悪そうな輩――端的に言えば不良の姿だ。
 対して隣に立つミクは、普段は高い位置でツインテールにしている髪を下ろし、シンプルなメガネ(因みに度は入っていない)をかけている。服装もクリーム色のワンピースにニットのカーディガンと清楚な装いで、大人しいお嬢様といった感じだ。
 不良と、お嬢様。この異色すぎる組み合わせは、人で溢れ返る休日の駅においては却って目を引いてしまうらしい。今更ながら、これは失敗だったんじゃないのか?
 ……と俺が心配しても当の首謀者は気にする素振りを全く見せないのだから、随分と気楽なもんだ。というか完全に楽しんでるな。

「あ、ほらクオ。そろそろリンが来ると思うから、予定通りレン君にメールしてね」
「……」
「…………何よ?」
「……別に。メール送ればいいんでしょ?」
「わかってるならさっさとやる!早くしないと計画が狂っちゃうじゃない」
「はいはい」
「『はい』は一回!……さーて、じっくり楽しませてもらおうじゃないの」

 そう言いながら、ミクは不敵な笑みを浮かべてホームの方を睨む。これじゃあ折角の「変装」も台無しだなぁとため息をこぼしつつ、俺はあらかじめ用意していた文面をメール作成画面に打ち込み、素直に俺を待っているであろう憐れな友人に向けて送信ボタンを押した。


 ……まったく、どうしてこうなった。


***


 今から2時間ほど前だろうか。ミクに連れられて俺が訪れたのは、ミクの言う「協力者」とやらの家だ。
 チャイムを鳴らして待つ事十数秒、扉から顔を出したのは、ピンクの長い髪を持つ大人しげな女性だった。彼女の名前は巡音ルカさん。ピアノ部に所属していて、ミクとは合唱部との合同練習で伴奏を務めた時に知り合ったらしい。因みに学年は俺達の一つ上だ。
 ルカさんはミクの顔を見ると、花の様にぱぁあ、と顔を綻ばせて微笑んだ。

「いらっしゃい、ミクさん!お待ちしていましたよ」
「こんにちはルカ先輩!今日はよろしくお願いしますー!」
「任せてください。お二方とも、ばっちりと変身させて差し上げますわ」

 事情はあらかた聴いているのか、ルカさんは特に確認する事もなく俺たちを家の中へと招き入れる。大人しそうな外見からは想像できないが、意外と悪ノリも行ける性質らしい。……ちょっと残念に思ってしまったのは、ここだけの話だ。
 落ち着いた雰囲気の廊下を通りぬけ、案内されたのはルカさんの部屋だ。真っ白なレースのカーテンに、ほんのりと桃色に色づいた壁紙が女性らしさを際立たせている。因みにベッドはセミダブル。……流石、金持ちのお嬢様のイメージそのままだ。

「さあ、どれでも好きな服を選んでくださいね」

 ルカさんは壁半面を埋め尽くすクローゼットを開け放つと、俺達を振り返って、中が見える様に一歩退いた。
 うわぁぁ、と感嘆の声を漏らすミクの後ろから俺もその中を覗き込む。並ぶのは彼女の私服であるフリルのついたワンピース、チェックのスカート、花柄のストール…………、って!

「ちょ、ちょっと待て!まさか、俺にこれを着ろとは……言わない、よな?」

 嫌な予感がした。
 そりゃあ、男の俺が女の格好をしていたら、そう簡単に見つかる事もないだろうけど……!でも、だからと言ってそれを受けるかどうかはまた別の話だ。冗談じゃない、俺は絶対にごめんだからな!!
 ヒラヒラの服を着せられた自分の姿を想像してぞわりと鳥肌が立ったところで、不思議そうな顔をしたルカさんから返ってきた言葉は。

「……あら、これが着たいんですの?」
「そんなわけありませんって!俺の話聞いてました?」
「案外似合うかもよ、やってみたら?」
「本気でやめて!!」

 いやまて、どうしてそんな発想につながる!?そしてここぞとばかりに便乗しないでミク!
 したり顔で横から口を出してきたミクに慌てて噛みつくと、さっきの言葉は冗談だったのか、ルカさんはくすくすと楽しそうに笑った。

「安心してください。あなたの変装に関しては、ちゃんと別の者に頼んでありますわ」
「そーいうこった!」

 と、突然乱入して来た低い声。慌てて背後を振りかえった俺は、目に映った姿に硬直した。
 大きなドクロがプリントされた真っ黒なTシャツに、同じく真っ黒なジャケット。ショートの髪はルカさんと同じくピンク色で、ファッションのつもりなのか、首には重そうなヘッドホンをかけている。……というか、誰だこいつ?

「紹介しますわ。わたくしの兄、ルキです」
「おう、ルキだ。よろしく!」

 おっとり系のルカさんとは見た目も雰囲気も正反対のその男――ルキさんは、豪快に片手を上げて挨拶をすると、目を細めてじろりと俺を検分し始めた。その間じっくり10秒ほど。舐めまわす様な視線からはじき出された結論は。

「……なんだァ、随分となよっちぃ野郎だな。こんなんで本当に尾行なんて出来んのか?」

 失礼な……!!
 呆れ顔のルキさんの言葉に、ルカさんは更にくすくすと笑って言葉を付け足す。

「あらお兄様、その為の『変装』なんですよ。スキルなんて関係ありませんわ」
「む……確かに」
「それに、元の姿とのギャップが大きい方が、装い甲斐があると思いません?」
「それもそうだな。よっしゃ腕が鳴るぜ!……ということでそこのお前!このオレ様がクールに変えてやるからな、感謝しろ!」
「は、はぁ……」

 着いていけない。正直全く着いていけない。
 取りあえず女装は免れたらしくその点は安心だが、話の流れから察するに、今度はこの野蛮そうな格好をさせられるらしい。……いや、これはこれで…………。
 俺を置いて勝手に盛り上がる「協力者」たちを呆然と眺めていると、突然ルカさんが「あ!」と声を上げた。

「いけません!もう10時半ですわ。急がないと約束の時間が来てしまいます」
「おっ、じゃあさっさと始めるか。おいそこの青緑!その子はルカに任せて、お前はオレについて来い!」
「え、ちょっと待って下さ」
「つべこべ言うな時間ないんだろ!?」
「だから人の話を――――!!」

 理解した。ここではまともな会話が出来ることを期待してはいけない。
 そうして抵抗する事を諦めた俺は、ずるずるとされるがままに腕を引かれてルキさんの部屋に連れ込まれ、普段は使わないワックスを髪にべったりと塗りつけられた上に、趣味には合わないチャラチャラとした服(不良みたいだと言ったらルキさんに「違う、ロックだ!」なんて訂正されたけど、俺からしてみればどっちも同じようなもんだ)を押し付けられたのだった。




 以上、回想終わり。



***

 ガタンゴトン……。列車がホームに滑り込んで来る。やがて響いてきたブレーキの音に顔を向けると、まず最初に目に入るのはベンチでがっくりと項垂れるレンの姿だ。携帯を持っている所から察するに、俺の送ったメールを確認していたのだろう。約束を直前でブッチされて、歯ぎしりでもしているのだろうか。その姿もホームに溢れて来た人に呑まれ、あっという間に見えなくなった。
 改札口から次々と吐きだされる人の波。ちらちらと向けられる視線を無言で受け流し、ようやく落ち着いたところで再びホームに顔を向けると…………

 ―――…あぁ。あれが噂の「リンちゃん」ね。

 人の捌けたホームに残された二つの影。呆気にとられた表情のレンの前に立つのは、髪の短い少女だ。緊張のせいか本人の性格かは分からないけれど、ちょっと気難しそうな雰囲気を漂わせている。なるほど、これがアイツの一目惚れの相手ってわけか。
 これからどーすんのかな、と眺めていると、リンちゃんはレンと二言三言交わして、そのままこちらに向かって歩き始めた。その姿を慌てて追いかけるレン。ほう……どうやら暫く一緒に行動する様だ。あ、アイツ顔がにやけてやがる。何かウゼェ。
 だんだんと近づいてくる二人の姿に、俺は無意識に壁際へと身を滑り込ませた。この位置は改札からちょっと離れているし、そんなに神経質になる必要はないのかもしれないけど、万が一って事もあるし……。ていうかこんな恰好をしているのに気付かれでもしたら、屈辱で死ぬ!
 息をひそめ、人の気配に紛れる様に。出来る事の限りを尽くして二人の様子を窺っていると……俺の願いが天に通じたのだろうか。二人はこちらには目もくれずに改札を素通りし、そのまま出口の方へと向かっていった。
 肩の力がどっと抜ける。あぁ、なんか無駄に疲れた…………。

「……クオ。そろそろ準備は良い?」

 そんな風に胸をなでおろすのもつかの間。ジャケットの袖をくいっと引かれ、頭一つ分下の位置からミクが囁いてきた。ぎらぎらと光る瞳は、獲物を狙うなんちゃらというか……うん、楽しそうだね。
 改めて出口の方を見ると、人ごみに紛れそうな位置に二人の姿。ここはさほど規模の大きい駅ではないけれど、休日はこうやってそれなりににぎわっている。このままぼけっと突っ立っていたら、あっという間に見失ってしまうだろう。
 ……仕方ない。ここまで来たんだから、腹をくくってやるしかないか。それにまぁ……なんだかんだで、俺もこういうの、嫌いじゃないし。
 こくりと一つ頷いて応えると、ミクは性質の悪そうな笑みを浮かべ、拳をぐっと握りしめながら小さく叫んだ。

「さぁ、作戦開始よ!!」


 ゴングの音が聞こえた気がした。



***

 そして翌日。


「『キミがてつだってくれたら、すごくうれしい』……だっけ?」
「―――――――~~~っ!?」

 教室で顔を合わせて早々、盗み聴きしたセリフを読み上げる俺に、「なんでお前がそれを知っているんだ!?」とでも言いたげに口をわなわなとさせる間抜けな友人。
 夢にまで見た(いや実際に見たかは知らないけど)リンちゃんとの再会が実は仕組まれた事で、尚且つ会話も全て聞かれていただなんて、流石に思いもよらないだろう。豆鉄砲どころかペイント弾位のダメージは与えられただろうか。いいザマだ。
 様々な客層で賑わうファーストフード店の中とはいえ、それなりに近い位置での尾行に緊張を緩める暇が無いわ、他の客からは相変わらず怪訝そうな目で見られるわであまりいい思いはしなかったのだけど、今こいつのこの顔を拝めただけでも、あの恰好を我慢した甲斐があったってもんだ。期待通りの反応、マジでご馳走様でした。



 まぁ、余計なおせっかいはこの辺にしといてやるから、後は勝手に頑張れ。どんな結果になっても責任は取ってやらないから、安心して玉砕して来い。


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もじゅつめつめ

更新しました~

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