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ブラコンシスコンな兄弟たちが帰ってきました。
時系列的には一昨年書いた1123・1125小説の続きです(詳しくは【もくじ】参照)。
ほのぼの、初詣のお話。今年もカイト兄さんの鏡音サンドをぐいぐい推して行きますのでよろしくお願いします。


御神籤日和

 双子の来襲から間もなく、大学の方は怒涛のひと月が始まった。
 忙しさの大半を占めるのは卒論――もとい卒業研究だ。提出時期は学部によってまちまちの様だけど、僕のところでは12月の末が締め切りとして設定されていた。
 集中力はそれなりにあると自負しているけれど、家の中には何かと誘惑物が多すぎる(主にテレビとベッド)。それに、周囲の人達のカリカリとした空気に触れていた方が、なんとなくやる気が出る様な気がするじゃない?そんなこんなで、残された時間を有効かつ効率的に使うためにも、期限前3週間くらいは図書室や研究室で分厚い文献に囲まれるだけの日々が続いた。その間の記憶は、必死だったがゆえにあまり残っていない。
 2日間の徹夜と引き換えに期間内での提出を無事に終え、安心したのもつかの間。憔悴しきった状態で研究室に文献を返しに行った僕に追い打ちをかけたのが、運悪くその場に居合わせた教授の一言だった。
 これで晴れて卒論の呪縛から解放されたのだから、皆で集まって思う存分羽を伸ばせと。要するに、やんわりと打ち上げの企画を持ちかけられたのだ。……勘弁してくれ。
 断ろうにも、部屋に居たゼミの仲間が一緒に盛り上がり始めたせいで逃げ場は無し。話の流れ上幹事を押し付けられるのは必須で、早く帰って寝たいとかそんな不満を渋々押し込め、手当たりしだい近くの居酒屋に問い合わせたのだ。
 ……結果は惨敗。当然だ、何せ忘年会シーズン真っただ中、空いている方が奇跡だろう。
 このまま話が流れてくれればよかったものの、店が空いていないのならお前の家に集まればいいじゃないか、なんてバカな事(失礼)を言い出す教授の鶴の一声で研究室はさらに盛り上がり、結局連絡の取れた10人くらいがぞろぞろと家に上がり込んで、好き勝手騒いで帰っていったのだった。
 片付けやら大掃除やらをやっている内に妹たちの誕生日は過ぎてしまい、最低限の荷物を詰め込んで実家に戻ってこれたのが大晦日の事。騒がしくまとわりついてくる双子にちょっと遅いプレゼントを渡して機嫌を取ると、久しぶりに食べるまともな食事に感謝しつつ、その日は除夜の鐘を待つ事もなく床に就いた。
 そして年明け。
 ここ一ヶ月くらいはゆっくりしている暇なんてなかったし、帰省するのだって夏休みぶりだ。予想外に予定が詰まったのは自業自得だけど、必要のない雑務までこなしたんだ。正月三が日の間くらいは、家の中でゆっくり―――――…





…………させてもらえるはずなんて無かった。


***

「ぜぇったいダメ!私が最初にお兄ちゃんと約束したんだもん、だから今日はお出かけするの!!」

 えー、右コーナー、ベージュのセーターにチェックの赤スカート、お気に入りのショルダーを片手にちょっとおめかし気味の妹、リン。

「なぁにが『約束』だよ!?俺だってカイ兄帰ってきたら一緒にゲームやろうって待ってたんだそ!勝手な事言うなよ!!」

 対する左コーナー、半年くらい前に出た人気ゲームシリーズの新作を片手にドアの前に立ちはだかる弟、レン。
 両者の間に炸裂する火花。お互い一歩も譲る気配はありません。…………えーと、その前に僕の意思はどこにあるのかな?
 この状況を簡単にまとめるとこうだ。
 新年の挨拶やらなんやらを昨日の内に終わらせ、ようやく時間の出来た1月2日。今日は朝からのんびりしようかなーなんて思いながらテレビのリモコンに手を伸ばすと、着替えを済ませたリンが勢いよく部屋に飛び込んできたのだ。
 友達とどこか遊びにでも行くのかなぁとぼんやり考えていると、リンは突然「お兄ちゃん、一緒に出かけようよ!」と誘ってきた。それに反応したのが、後ろから入ってきたレンだった。あとは見ての通りだ。
 リンは自分の方が先に僕と約束したんだって引かないし(約束なんかした覚えが無かったから正直焦った。ひょっとしてあれかな、この間二人がうちに駆け込んだ時かな?それだったら何となくそんな事を言った様な気がする)、レンはレンでそんなの認めないの一点張り。
 あえて選ぶならレンのゲームの方が体力消費が少なそうだけど、僕個人の意見としては、こたつでみかんでも食べながらゆっくり箱根駅伝を見ていたい。

「もぉ~お兄ちゃんからも言ってやってよ、お正月は私にたっぷり付き合ってくれるんだって!」
「カイ兄は疲れてるんだぞ!リンの買い物に付き合わせるより家でゲームやってる方が良いに決まってんじゃん!!」
「ゲームなんかいつでもできるでしょ!それに行きたいのは買い物だけじゃないもん、カラオケも行くんだもん!あと美味しいケーキ食べるの!」
「正月っからそんな場所行くなよ!てゆーかケーキはこの前食べたばっかじゃん、太るぞ!!」
「正月なのに引きこもってゲームしてるよりはマシですー!」
「なんだと~!?」

 見ていたい、のだけど――――

「お兄ちゃんはどっちなの!?」
「カイ兄はどっちなんだよ!?」

 ……この様子じゃ、それすらも無理そうだ。嗚呼、さらば僕の優雅な正月。

「はいはい、二人の言い分はわかったから!取りあえず落ち着く」

 のそのそと炬燵から這い出ると、依然火花を散らせている二人の間に立つ。どっちを選んでも喧嘩になるんだから、ここは別の道を考えるしかない。出来れば外には出たくなかったんだけどなぁ……。

「リン、二人で出かけるのはまた今度にしよう。街中だと今日は混んでそうだし、ケーキもクリスマスと誕生日に食べたばかりでしょ?そしてレン、午前中からゲームなんて無し無し。あとで付き合ってあげるから、とりあえず外に出る準備をしてきなさい」
「え……?」
「は?どこか連れていくのかよ」

 不思議そうな顔で見上げてくる二人の肩をぽんと叩いて、僕もコートとマフラーを取りに自室へと向かう。

「初詣に行こうか」

 どうせ帰省中のどこかで行くことになるんだから、少しくらい予定が早まったって良いでしょう。


***

「さっむ……」
「うわぁ、結構人いるねぇ……」

 自宅から徒歩15分程の所にある神社にたどり着くと、そこには既に参拝客の列が出来上がっていた。
 取りあえず手水舎で両手と口を清め、ズラリと伸びた列の後に付く。昨日に比べたらまだマシなのかもしれないけど、順番が回ってくるまではちょっと時間がかかりそうだ。
 前の方でシャラランと鈴が鳴る。そう言えば二人がまだ小さかった頃、どちらがあの鈴を鳴らすかでよく喧嘩をしていたっけ。後ろの人達にも迷惑だから僕が先に鳴らしちゃって、あとで二人に泣きつかれたんだよなぁ。あの時は参った。
 それ以来だっけ。お参りの時に誰が鈴を鳴らすかを予め決める様になったのは。

「今日は誰があれやる?」
「私!私やりたい!!」
「レン、それでいい?」
「別に」
「じゃあリンお願いね」
「任せといて!」
「そういえば、二人はもう何をお願いするか決まってるの?」
「お願いねぇ……どうしよっかなー。カイ兄の卒業祈願とか?」
「うわ、なんか傷つくなそのお願い!」
「でも論文の発表会で合格点もらえないと卒業できないんだよね?」
「リンまで!大丈夫、提出したものに関しては特に問題なかったし、緊張で頭真っ白にならない限りそうそう落ちないよ。……多分」
「へぇー。じゃあ、カイ兄が緊張しませんようにーってお願いしといてやるよ」
「じゃあ私もー」
「ちょっと二人とも…………」

 そうやってあれこれ話している間に列は進み、ようやく僕らの番が回ってきた。
 リンを真ん中に三人で並ぶ。二礼二拍手なんちゃら……と作法があるらしいけれど、その辺はうろ覚えなので適当でいいかな。
 賽銭箱に投げ入れるのは、語呂合わせにあやかって何となく五円玉で。チャリンという音と共に小銭が下に落ちたのを確認すると、リンが鈴緒を揺らし、シャラシャラと心地よい音が頭上で鳴った。
 手を叩いて目を閉じる。二人の言う通り卒研発表も心配ではあるけれど、一番の問題はやっぱり来月半ばの大学院入試かな。ここの所忙しくて試験勉強まで気が回らなかったし、縋れる神には縋っておきたい。
 じっくり時間をかけて願い事を唱えると、一礼して階段を下りた。まあ、あとは自分の努力次第かな。家に居る間はそっとしておいてもらえないだろうから、勉強はアパートに戻ってから頑張る事にしよう。……うん、なんとかなるよ、きっと。



「あ!」

 お守りも買い終わったしそろそろ帰ろうかなーと考えていると、リンが突然声を上げた。

「どうしたの。何か見つけた?」
「お兄ちゃん、おみくじ!おみくじ引こうよ!!」

 くいくいとコートをひっぱるリンの指さす先には……なるほど、長机の上に真っ赤な箱が3つ。所定の入れ物にお金を入れて、箱から一枚引くタイプのおみくじらしい。受験を控えている身としては、引きたい様な引きたくない様な…………。
 そんな僕の心情を代弁するかのように、レンが顔をしかめた。

「おみくじぃ~?新年早々大凶とか引いたら嫌じゃん!」
「ちょっとレン、引く前からそういう事言わないでよ!」
「わかんないぜ?リンくじ運悪いじゃん」
「レンだって良くないくせに!」
「じゃあどっちが運勢良いか勝負しようぜ!」
「望むところよ!!」
「……おーい、二人とも、喧嘩はほどほどにねー」

 ああ、やっぱこれは僕も引かなきゃいけない流れかな?
 残念ながら僕もくじ運は良い方じゃないけれど、せっかくお願いして来たばかりなのだから、がっかりせずに済むものが出て欲しい。……大吉なんて贅沢な事は言わないからさ。
 横に並べられた箱に百円玉をチャリンと落とし、二人に続いて念入りにくじを選び抜く。さあ、文字通り吉と出るか、凶と出るか。

「いい?せーので三人いっぺんに開くの」
「へいへい」
「りょーかい」
「せーの!!」

 小さく折りたたまれた紙を片手に輪になって、ガサガサと広げる。結果は――――

「小吉かぁ……なんか微妙」
「なんだよ、リンも小吉かよ!?」
「レンも?むー、勝負引き分けかぁ……」
「カイ兄は?」
「…………小吉」
「マジで!?」

 凶が出なかっただけマシなのかもしれない。だけど、この嬉しくも悲しくもない微妙な運勢は、どう反応したらいいものか……。
 それにしても、三人でそろって同じ運勢を引くとは予想外だった。くじの番号自体は流石に違うみたいだけど、こんな所までお揃いにならなくても。

「なんか拍子抜けだなー。一人くらい大吉!とか大凶!とか出た方が盛り上がったのに」
「まぁ、喧嘩にならないんだから良かったんじゃない?」
「そーだけどさ……」
「じゃあ、みんなの結果を足して大吉ってことでいいんじゃないの?ほら、三人集まればもんじゃ焼き!みたいな」
「三人寄れば文殊の知恵、だろ?無知乙」
「し、知ってるもん、わざとだもん!知ったか乙!」
「どーせだったらもっとカッコイイ例えにしろよなぁ。ファイヤードラゴンがフレイムドラゴンに進化して、さらにフレアドラゴンにレベルアップする!みたいな」
「なにそれダッサ!」
「うるせー!お前のよかマシだろ」
「喧嘩してると置いてくよ~」
「「行く!!」」

 パタパタと追いかけて来る足音が左右に並ぶ。未だ途切れる気配のない参拝客の列を横目で流し、僕たちは鳥居をくぐった。

 家へと向かう帰り道。リンもレンも相変わらず口論を続けていて、すれ違う人に苦笑交じりの視線を向けられている。僕に対しては哀れみか。
 そんな二人の後を歩きながら、僕は思い出したようにポケットからさっきのおみくじを取り出した。そういえば運勢以外の所、まだちゃんと読んでいなかったっけ。
 願望、病気……恋愛は今のところどうでもいいかな。あ、進学はそこそこよさそう。失物は諦めろ、かぁ。あとは就職、転居、旅行…………

「……あ」
「ん?どーしたんだカイ兄」
「おみくじ、何か変な事でも書いてあった?」
「……いや。頑張らなきゃなーって思って」
「なんだそれ?」
「いいから、早く帰ってお昼にしよう」
「うー、お昼またお節の残りかなぁ」
「いい加減飽きるよなぁあの味。ハンバーグとか出て来ないかな」
「いや、お餅いっぱいあったからきっとお雑煮かと……」
「「えー!!」」

 ぶーぶー文句を言い合う二人に苦笑を漏らして、畳んだおみくじをポケットにしまう。

 ――――【家庭】厄介事多し 冷静に対処すべし



 どうやら今年も、賑やかな一年になりそうだ。


◇◆◇
兄さんは就職しないで大学院に進みます。多分別の大学の。
大学院試験の入試スケジュールは軽く調べた上で書きましたが、割とアバウトなので細かい突っ込みどころはスル―してやってくださいw
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リク③

あけましておめでとうございます!

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