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続、アホくさいギャグが書きたくて。
リンさんようやく登場です。中身は無い軽ーいお話のはずなのに時間がかかってしまったのは、中途半端にまじめに書こうとしてしまったせいです。もっと頭の中空っぽにしてサラッと吐き出してしまいたかった……_(:3」∠)_
前半リンクは【こちら】

。。。
――と、やる気を出したまでは良かったんだけどなぁ。
 バレンタイン仕様のイルミネーションを横目で眺めながら、己の情けなさに頭を抱える。
 あの後きっちり五日間悩みに悩んで、友人のアドバイス通り当たって砕け散る覚悟をようやく固めたというのに……驚く事なかれ、デートも終わりという時間になった今でさえ、何も出来ずにいるのだ。気合を入れた今朝の俺は一体どこへいってしまったのだろう。闇色に染まった空に負けない位、頭の中は真っ暗に塗りつぶされつつある。
 きっかけなら多分、いくらでも作れたと思う。例えば映画の後。観たのがラブロマンスからは程遠いアクション系だったとしても、主人公と友人の絆の強さを引き合いに出して「あんな風にお互いを支え合えるようになれたら」なんて無理矢理繋げることは出来ただろうし、買い物中に見かけた子連れの若夫婦をネタに「いつかはああやって」なんて振ってみてもよかった。怖気づいて折角のチャンスを逃すだなんて我ながらダサすぎる。クオに知られたらまた笑いのネタにされるぞ……それだけは阻止だ阻止!
 薄い三日月が浮かぶ空の下、俺の少し先を歩くリンの足元では控えめなヒールがリズミカルに音を躍らせている。デートの時にヒールの靴を履いてくるようになったのはいつからだっけか。身長差に優越感を抱くほど心は狭くないけれど、目線が近くなった分その手のスキンシップで先手を取られやすくなったのも事実で、どこか釈然としない。マフラーから零れた金の髪は冷たい風に梳かれてサラサラと揺れる。職場の女子社員ほどきつくはないけれど、仄かに漂ってくる甘い香り。多分、シャンプーの類ではないだろう。心臓の内側を指で撫でられたみたいに、そわそわと気持が落ち着かない。
 そういえば、ここ数年でリンは随分と「女の人」になったと思う。控えめながら化粧をしだしたのは確か大学に入ってから。パンツスタイルの私服が減ったのもその頃だったろうか。香水をつけている事に気付いた時は流石に焦ったっけ。
 こうやってふわふわとした大人の女性らしさを身に纏う様になっても、性格の方は相も変わらず男気満載なのだからやり難い事この上ないんだよなぁ。どうせこれも全部、いつか言っていた「普通の女の子みたいな事」を楽しく実践しているだけなんだろ? 俺の気を引きたくて女の子らしくするだなんて、そんな可愛らしい事、リンは絶対に考えない。
 カツン、カツン。軽やかなヒールの音がじわじわと俺を焦らせる。駅まではあと五分くらい。それまでに何か言わないと、次に会えるのは早くて二週間後になってしまう。急ぐような問題じゃないとはいえ、もやもやとした気持ちは出来るだけ早めに手放した方が精神衛生上いいに決まっている。というか再来週はバレンタインなんだ、下手するとまたいつものパターンになりかねない。迷っている場合じゃないぞ鏡音レン、今こそ砕ける時だ……!
 冷たい空気を吸い込んで肺と頭を冷やし、手の平に滲んできた汗を握り潰す。呼び止めようと口を開きかけると同時に、前を歩いていたリンが、くるりとこちらを向いて――……
「ねぇ。そろそろ結婚しよっか?」
「リ――――……え?」
 ちょっと待て、今なんて言った。
 突然の事に思考が追い付かずその場に立ち止まる。いま、とても良くないことを聞いたような気がする。
 中途半端に口を開いたまま、幻でも見ている様な気分で頭一つ分だけ下にある顔を見下ろすと、リンは翡翠の瞳を不思議そうにぱちぱちと瞬かせた。
「だから、結婚しようって言ったの。聞こえなかった?」
 けっこん。音にして三か四そこらの単語の意味を確かめる様にゆっくり、噛み締める様に呟いて、
「――――何で言っちゃうんだよォォ!?」
 思わず叫んでいた。否、叫ばずにはいられなかった。嗚呼、最後の砦、此処に崩れたり。
 先を越される前に何とか対策をと考えた矢先、この仕打ちだよ! いや、もたもたしてたのは俺の方だし百パーセント自業自得なのはわかっている。わかっている、けど……!
 膝から崩れ落ちそうになるのを堪えただけ褒めて欲しい。真夏に襲い来るゲリラ豪雨の如く急激に落ち込んだ俺に反して、リンはキョトンとした顔で首を傾げるのみだ。
「何でって……いつまで待ってもレンが言ってくれないんだもの。もう面倒くさいし、私が決めちゃっていいかなって」
「面倒臭いで片付けちゃうような関係だったの俺達!? ていうか待ってたって何待ってたって……!」
「これでも最後くらいは花を持たせてあげる気があったんだよ。レン、今までの事結構気にしてたでしょ? だからプロポーズだけは譲るつもりだった……というか、譲ってあげてって職場の先輩に頼まれちゃったんだけど」
「だったら最後まで待とうよ!?」
「待ったよ、一年くらい。もう十分かなって……」
「一年短い!」
「えぇぇ……じゃああと何年待てばよかった?」
「うっ、それは――……」
 一番痛いところを突かれてしまってはもう反論の余地も無い。待ってくれる気がない事よりも、迷わず年単位で尋ねられた事の方が大ダメージだ。俺ってそこまで期待値低いのか? というかそもそも期待なんかされていないのか!?
 訊いてしまったら更に落ち込むだろう未来しか見えないから、その問いかけは心の中にきっちり仕舞って、とりあえず深呼吸。起きてしまった事を悔やんでも仕方がない。まずは、お互いの気持ちを整理する事から始めよう。
「……なんで、急に結婚しようなんて思ったの」
「んー……だって、そっちの方が楽でしょ。お互い仕事が忙しいんだし、一緒に住んじゃえばこうやって会う時間をいちいち調整しなくても済むもの」
「いやいやいや、だったら『同棲から始めよう』でもさ……!」
「まどろっこしいよ。ていうかそれって必要なステップ?」
「……」
 そう、リンはこういう性格だ。一度GOと決めればもう迷ったりなんかしない。きっと「お試し期間」なんて言葉は彼女の辞書には存在していないのだろう。自分の人生に関わる重大な選択だっていうのに、男気がありすぎる。
「どう。結婚、良いと思わない?」
「そりゃ、楽って一面には賛同するよ。確かに最近ちょっと時間合わないし、毎日一緒にいられるのは嬉しいし……けど、リンはそれでいいの。ていうか本当に俺でいいの?」
「私は何も不満じゃないよ。レンはどうなの。私じゃ不満?」
「そんなわけないだろ!」
「じゃあいいじゃない、決まり。そうだなぁ、式は別にいいから、とりあえず籍を入れるのと、引っ越し先をどうするかだよね――」
「いやだから……!」
「何か問題でも?」
「…………ないです」
 坂道を転がるボールって、きっとこんな気持ちなんだろう。そんなろくでもない事を考えながら、降参の溜息を一つ。愛だのなんだのよりもまず利便性を理由に出す辺り、リンらしいというかなんというか。男としてはちょっと微妙な心境だ。
 若干やけくそじみた気持ちになりながら、再び歩き始めたリンの横に早足で並んでその顔を見下ろす。言う事言って満足したのだろう、表情は清々しい程にすっきり晴れやかだ。……くそ、やっぱ納得いかない。
「……リン」
 前方を睨み付けるようにして歩きながら、名前を呼ぶ。隣で見上げる気配。
「何?」
「好きだ」
「私も好きだよ」
「俺、頼りないし稼ぎもあんま良くないけど、」
「大丈夫、私もちゃんと働くよ?」
「いいからちょっと話聞けって! ……えーと、俺はリンに適う事なんか何もないけど、でも、リンの事を大事に思う気持ちは、誰にも負けないはずだから」
「……知ってる」
「だから、その……」
 トンと地を蹴ってリンの前へ回る。進行方向を塞いで真っ直ぐに向かい合う。逃げ場はない。逃げるつもりもない。
「――俺とずっと、一緒に居てください!」
 吐き出された声は、不恰好に上擦ってしまった。
 それから暫くは時間が止まったような心地だった。歩道のど真ん中で立ち止まる俺たちの横を通り過ぎていく車の音に、漸く我に返る。
 ああ、砂漠の中心に放り出されたみたいに喉がカラカラだ。絞り出した唾で喉を湿らせて、そのまま恐る恐るリンを窺い見る。いつもの余裕たっぷりの表情が驚きに染まって見えるのは多分気のせいじゃないだろう。そういう事に、しておこう。
 ゆっくりと二回、瞬きをしたリンは、首を傾げることも無く真っ直ぐ俺の目を見て一言だけ問うた。
「それは、プロポーズ?」
「……っ、じゃなかったら何だと思うんだよ……!」
 今度こそ、膝から崩れ落ちそうになった。
 わかってる、所詮俺じゃリンには敵わないんだ。ぐずぐずしている間にプロポーズは先を越されるし、それじゃ悔しいからって思い切ったのに全く相手にされていないし、そもそもリンのプロポーズの方が潔いし、なんだこれマジでダサい。
 越えられない壁を目の前にしている様な無力感に肩を落としていると、リンが考え込む様に口元に指をあてる。そして、
「……うん、悪くないかも」
「へ?」
「たまにはこういうのもいいなって事。うん、いい気分」
 何かに納得するようにこくりと頷くと、そのまま俺の横をすり抜けて歩き出した。どうやらあのプロポーズを気に入ってくれたらしい。みっともなくぶつかる作戦は、想像以上に効果アリだったようだ。
 軽やかに遠ざかって行く足音を慌てて追いかけて、うしろ側でつながれていた手を絡め取る。交互にさせた指に力を入れると、応える様に握り返された。うん、やっぱりこうでなくちゃ。
「……今度、婚約指輪、選びに行こう」
「ええぇ、いいよ指輪なんて。それより美味しいもの食べに行きたい」
「…………旅行でもする?」
「肉食べたいなぁ、美味しいお肉!」
「……検討させていただきます」
 ダイヤが肉に負けるのか。それは想定外だったよ!
 とりあえず候補地として三重やら兵庫やらを思い浮かべつつ、旅行資金を確保するためにも明日からの仕事を頑張ろうと心に誓うのだった。


◇◆◇
いつも口調キツめのイケリンさんばかり書いているので、口調の柔らかいイケリンさんを目指しました。竹を割ったような性格ってかんじですかね……
リンさん 肉>>>>|越えられない壁|>>指輪
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大切な人へ贈る手紙

新年と言える時期はもうとっくに過ぎ去ってしまった

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