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受験のお話。ゆるーくknsn要素ありです。

……ところで世間一般の中学生の受験ってもう終わってます?


。。。

夜明けを待つloneliness

 冷え切った部屋の空気に、固く押し殺したノックが響いた。
 その音に応えることはせずにペンを握るかじかんだ手を動かしていると、扉の前に立つ人物が溜息を吐く気配。程なくしてノブが回された。
「うわ、さっむ……」
 許可もしていないのに勝手に入って来たそいつは、廊下とほとんど変わらないであろう部屋の温度にがっかりしたような声を漏らす。今更ながらに寒さを思い出した身体が小さく震えた。
 無言のまま睨み付けると、血を分けた弟、レンはやれやれと言った感じに肩を竦める。運んできたお盆の上には白い湯気を立ち上らせる私のマグカップ。中身は、多分ココアだ。甘い香りと仄かな熱が凍り付きそうな空気を少しだけ溶かす。
「ちゃんと暖かくしないと風邪ひくよ? ほら、エアコンつけるから」
「――っ余計な事しないで!」
「……リン……」
 照明スイッチ横に収まっているリモコンへ手を伸ばす弟を咎める声は、思いの外大きく響いてしまった。相変わらず尖った物言いしか出来ない私に形の良い眉が下がる。最近は、こんな顔ばかり見ている気がする。
 面倒な姉だと、心底呆れているのだろうか。……ううん、レンはこっちが呆れてしまう程に優しい性格だから、そんな事は考えない。純粋に心配してくれているだけだ。胃の中に不快感と自分への嫌悪が溢れ出して気持ちが悪い。
「……部屋、暖かくすると頭がぼうっとするから……このままが、丁度いいの」
「丁度良いわけないだろ、声震えてるじゃ」
「これでいいの!」
……ああ、これじゃあまるで駄々っ子だ。
 こんな子供じみた態度、本当は取りたくなんかないのに、優しさから滲み出る気遣いは気持ちを荒れさせるばかり。
 唇の端を微かに噛んで、けれど手の動きは止めずに黙々と問題を解いていると、今度こそ、彼の口から零される溜息をはっきりと耳が捉えた。
「……あのさぁ、勉強熱心なのは結構だけど、ちょっとは休憩しなよ。てか今日は大晦日なんだよ? こんな日まで必死になることないじゃん」
「こんな日だからこそ、勉強するの。それに正月明けは模擬試験があるんだもの、休んでなんかいられない」
「一日くらい休んだところで大して変わらないと思うけどなぁ。寧ろ効率悪くなるんじゃないの?」
「うるさいっ、あんたには関係ないんだから、用がないなら早く出ていってよ!」
「……ハイハイ、邪魔して悪かったね。用が済んだら早急に退出させていただきます」
 レンは呆れた様に答えると、これ見よがしにお盆を軽く掲げた。甘い香りが強くなる。
 大晦日ですら気が抜けない位今の志望校への合格が危ういのは、悔しいけれど事実。模試の判定で合格圏内に入ったのは一度きりで、最近はずっと低迷している。寧ろ前より悪くなった様な気さえする。
 受験に気持が入っていない――それは自分でも良く分かっているし、責任は私自身にある。レンは関係ない。……だから、もう構わないでほしいのだ。これ以上優しくされたら、私はきっと、全てをレンのせいにしてしまう。集中出来ないのも、気持ちがささくれ立つのも、全部あんたのせいだと言ってしまいそうになる。そんなの、勝手だ。
 とにかく、これ以上余計な事を言わない為にも問題に集中して、レンが出て行ってくれるのを待とう。そんな風に考えながらペンを握り直そうとしたけれど、寒さの所為でとっくに感覚の鈍くなってしまった指はいう事をきいてくれない。ふと気が緩んだ隙に零れ落ちたペンがコロコロと机の上を転がって、その横に、タイミングを狙ったみたいにカップが置かれる。……最悪だ。
 レンは勘が鋭いから、力が入らなくなっている事なんてすぐに気付いてしまうだろう。これを理由にエアコンのスイッチを入れられたら堪ったもんじゃない。なるべく視線を合わせないよう、自然を装って手を伸ばす。けれどその指先がペンに届くよりも先に、満足に動かせない私の手は横から伸びて来た別の手に絡め取られてしまった。
「うわつめたっ! 氷みたいじゃん、こんなんでよく字が書けたね」
 驚きと関心が混ざった様な声を漏らしながら、レンは捕まえた私の手を一回り大きいそれでぎゅっと包み込む。温度の高いものが触れた所為で、指先に一瞬痺れが広がる。あまり好きじゃない感覚だ。レンの手なら、尚更。
 振り払う力すら出せなくて、低く抑えた声で責めるように問う。
「……何してんの」
「何って、見ての通り暖めてあげてんの。ったく、感覚無くなるほど冷えるんだったら、せめて手袋するとかさぁ」
「集中していたから気にならなかったの! いいから離し」
「こら動かない。文句なら後でじっくり聞いてやるから、今は大人しく暖められてなよ」
「っ……」
 笑いを含みながらもどこか強いその口調に、どうしてだか逆らう事は出来なかった。ぐっと唇を噛んで睨む私を見てレンはしたり顔。あぁ、本当に最悪だ。
「……随分と暖かいのね」
「んー、さっきまでこたつに入っていたし、キッチンでミルク温めたりもしたから、かな。ていうかリンが冷えすぎなんだよ」
「もう、いいから……」
「だーめ。まだ動かせないだろ? シャーペンも握れないのにどうやって問題解くつもり?」
「……」
 手を擦りあわせて、時々息を吐き掛けて。レンの熱が、少しずつ私の温度を上昇させる。
 右が終わったら左。レンの手のひらは私に熱を奪われてもなお暖かい。
 そういえば昔、誰かが「手の冷たい人は心が暖かくて手の暖かい人は心が冷たいんだ」なんて事を言っていたけれど、そんなの嘘だ。だって、本当に心が冷たかったら、こんな風にひねくれた姉を気遣ったりはしないでしょう? 心が冷たいのは私の方。私の心はこの手の何倍も冷え切って、カラカラに乾いている。
 記憶には無いごつごつとした骨の感触はさっきから胸の中をざわつかせるばかりで、気持をち逸らす様、問題集の数式をじっと睨み付けていると、最後の仕上げといった感じに両手でポンと挟み込まれた。
「はい、終わり。大分ほぐれたと思うけど、まだ冷たいようだったらそのカップで暖めて。結構熱いの入れておいたから暫く冷めないよ」
 どこか満足げな声を聞きながら、試しにそっと指先を曲げてみる。手招きをするみたいに、軽く三回。……大丈夫、ちょっとぎこちないけれどちゃんと動く。これならさっきみたいにペンを落とすような事も無いだろう。
 ほぅ、と息を吐き出し、そのまま転がったペンを拾おうとして――ああ、これじゃだめか。伸ばしかけた手を渋々戻すと、むすっとした気分を精一杯抑え込んでレンに向き直る。
「ありが、とう……」
「ん、どういたしまして。ああ、あと身体の方もちゃんと暖かくする事。暖房が嫌ならせめて毛布被っときなよ、模試前に風邪ひいたらシャレになんないだろ」
「……」
「リーン?」
「…………わかった」
 拗ねたように答えると、レンは口元を緩めながら頷いて立ち上がった。向かう先はドアじゃなくて私のベッド。どうやら毛布を取ってきてくれるらしい。まったく、最後までお節介なヤツだ。
 追い出そうとする気持ちもすっかり削がれてしまって、床に足を投げ出したまま大人しく渡されるのを待っていると、帰って来たレンが毛布を私の背中に回す。
 ふわり――広げた勢いで起きた風に、解きかけのテキストがパラパラと捲れる。レンはそのままゆっくりと私の肩に毛布を乗せて、
「――っ、何、するのっ!?」
 不意に傾いた身体に、思わず叫び声をあげてしまった。
 気が付くと私はレンの腕の中にいた。強くはないけれど、決して弱くも無い力が私を包む。抜け出そうと身じろぐとその力が微かに強まった。逃がさない、とでもいう様に。
 押しつけられた熱とは対照的に、私の体温は水でもかけられたみたいにすっと下がっていく。口も鼻も塞がってはいないはずなのに――息が、出来ない。
「――レンッ! いい加減に」
「俺のせい?」
 耳元で零されたその言葉に、頭の中が真っ白になった。
「……どう、」
「リンが志望校を変えたのは、この家から出ていきたかったからでしょ。俺から離れる為なんでしょ」
「ち……違う! そんなわけな」
「あるよ。あの時俺があんなこと言わなければ、リンはまだ俺と同じ高校を目指していた。寮設備の整った県外の学校とはよく考えたね。一人暮らしよりは安心だから心配性な母さんも説得しやすいし、偏差値的に申し分なし、大学への進学面でも有利となれば家を出てまで目指そうとしたって全然おかしくない。――これで、誰にも怪しまれる事なく、こんな……実の姉に好意を寄せる気色の悪い弟と、距離を置けるようになるわけだ。……そういう事だろ?」
「レン……」
 毛布を掛けた肩にレンの頭が乗せられる。表情はこの位置からじゃ見えないけれど、声が少し震えていたから、泣き出しそうにしているのかもしれない。
 寂しい時や悲しい時に肩にもたれ掛かるのは、私たちがまだ幼稚園生だった頃からのレンの癖だ。あの頃の様に無意識に手を伸ばしかけて――けれど、その手は丸まった背に触れる直前ではたと止まる。
 私には、レンにかける言葉が無い。


 双子の弟が自分に好意を抱いていた事も、それを困ったように伝えてきた事も、簡単に受け入れられる問題じゃなかった。
 冗談だと笑い飛ばせたならまだ楽だったのかもしれないけれど、生憎私はそんな余裕持ち合わせていない。それに進路について悩んでもいたから、どうしてこのタイミングでそんな面倒くさい事を言うんだろうって、苛立つばかりだった。
 レンはレンで、自分の想いに応えてもらおうだなんて端から思っていなかったらしく、「今はそんな事考えてられない」と突き放した私にただ笑みを返すだけだった。溜めこんでいた気持ちを吐き出せただけで十分だと、静かに笑うだけだった。
 ……でも、本当は十分なんかじゃないんでしょ? 気付かれないようにやっているのかもしれないけれど、レンが時々思いつめた顔で私を見ている事、ちゃんと気付いているよ。応えてもらうつもりは無いのに諦めることも出来ない、それが苦しい――歪んだ表情から滲み出るのは彼の本心だ。視線が交わった瞬間に隠してしまうから、私は知らないふりをするしかないけれど。
 レンは、もしかしたら気持ちを伝えてしまった事を後悔しているのかもしれない。
 あの日以来、私は目に見えてレンを避ける様になったし、告白をきっかけに志望校を変えたのも事実ではあるから。嫌われたと思ってしまうのも、無理はない。……でもね。
「自惚れんじゃないわよ。あんた如きに、私が進路を左右されるわけないじゃない。あの学校を選んだのはやりたいことが出来るからで、あんたから逃げる為なんかじゃない。ほら、あそこ吹奏楽の強豪でしょ? コンクールは常に上位だし、あの中で私も演奏出来たらいいなって前からずっと憧れていたから。勉強は……もっと頑張らないといけないけれど、努力はするつもりだったし」
 高校でも吹奏楽部に入ることは、最初から決めていた。元々志望していた家の近くの高校にも吹奏楽部はあるし、県内でもそこそこ優秀な成績だから不満は無かったけど、でもやっぱり憧れの高校とのレベルの差は明らかで、未練の様なものは引き摺っていたんだと思う。模試の志望校欄に名前をそっと記入してみて、必死に頑張れば届かなくもないかもってわかってからは、行ってみたい気持ちは一層強くなった。
「……ただ、一人で県外に行くって言ったら、お父さんもお母さんも反対するでしょ。寮だからご飯の心配はないけれど、知らない人ばかりの場所で生活するのは私もちょっと不安だったし、駄目だって言われるのはやっぱり嫌だから、あまり積極的になれなくて……。そんな時にあんたが気持ちを伝えて来て、考えが変わったの。ダメ元でも自分の意志を貫いてみよう、後悔しない様に言いたいことは言っておこうって」
 本音を言うと、ちょっとだけ悔しかったんだ。気が弱くって自分の考えを殆ど表に出さないレンがあれだけ勇気と覚悟のいる言葉を口にしたのに、どうして私はまだ迷い続けているんだろうって。レンに出来て私に出来ないわけがないっていう意地、そしてこの忙しい時期にそんな重い話をしてきた事への苛立ちが爆発して、進路変更に踏み切った。八つ当たりに近かったのかもしれない。
 肩に乗せられた重みは変わらない。俯いたままのレンに、私は語り続ける。
「あんたの気持ちは、悪いけどあまり良いもんじゃない。普通に困るし。だから距離を置いてみるっていう考えには賛成だし、あんたも私がそうするために進路を変えたと思ってるから、そうやってへそを曲げているんでしょ? でもね、私はあんたが思っているほど、あんたの事を考える余裕なんて無いの。目標が高くなって、勉強量が増えて大変。告白されたことだって、忙しくて忘れていた位だもの」
「……酷いなぁ。こっちは不安で吐きそうだったのに」
「残念ながらあんたの姉はそういう人間なの。だから変に気を揉む必要はないし、それに――」
――……それに、私はレンの気持ちには応えてあげられないけれど、気色悪いとか、そんな風には思っていないから。
 毛布越しに背中に回された腕がぴくりと動く。私はその背をただ見下ろすだけ。慰める資格なんて私には無い。レンも、きっと望んではいない。
 カーテンに隠された窓の向こう側では夜が静かに騒めいていた。除夜の鐘が鳴り響くまではあと一時間、リビングで流れているであろう歌番組も、終盤に向けて盛り上がっている頃だろう。
 身動きも取れないまま重みを支えていると、はぁ、と湿っぽい息が吐き出された。
「リンは優しいね。……知ってたよ、リンが俺に冷たく当たるのって、俺がリンの事をちゃんと諦められるようにする為なんだろ。本気で避けるつもりだったら、目を合わせないとか、無視するとかいくらでも出来ただろうに、リンは嫌々ながらも俺の話聞いてくれるし、俺の事ちゃんと見てくれてる。突き放すような態度を取った後も、一瞬だけ気まずそうな顔になる。……ごめん、そういうのちゃんとわかってて、我儘言った」
「レン……」
「あーあ、隙あらば考え直してもらうつもりだったけど、リンの意志が固すぎてもう手も足も出ないや」
 もたれ掛っていた肩から顔を上げたレンが、へにゃりと笑う。手のひらに落ちた雪が熱で溶けるみたいに、綺麗で、儚い笑みだ。
 優しい――そんな形容私には似つかわしくないのに、レンはこんな時でも気遣いを忘れない。だから、話したくなかったんだ。
「心配かけてごめん。大丈夫、俺こう見えて結構神経図太いからさ、そのうち『そんな事もあったなぁ』って笑い話にするくらいには元気になるから」
「……ごめん」
「謝らないでよ、俺の立場なくなるじゃん。……さて、長居し過ぎても邪魔だろうし、そろそろ戻るよ。繰り返すけどあんま無理するなよ? 夜更かししないで疲れたらちゃんと寝る事。あと、寝る前にもう一度風呂で身体を暖める事。日付が変わるまでは俺も起きてるし、カップはその時にでもキッチンに持って来ればいいから」
「……うん」
 消えそうな声で答えると、レンはいつもみたいにやわらかく笑って私の肩から手を離す。今度こそ、向かう先はドアだ。
 毛布の端を身体の前に引き寄せて俯く私の背後で、静かに扉の閉まる音が響く。張り詰めていた緊張が解けた途端、身体が小さく震えた。


 テーブルの上に放置しっぱなしだったカップを両手で包んで、口元に寄せる。レンの言った通り、熱い液体を注がれた陶器はこれだけ時間が経ってもまだ熱を保っていた。けど、中身は分離を始めてしまったのかほんの少しミルクの色が濃い。早く飲まないと、沈殿したココアがカップの底に残ってしまう。
「……ねぇ。きょうだいに恋をするって、どんな気持ち?」
 ゆらゆらと揺れる液体を眺めながらほとんど無意識に零した問いが、甘い香りの中に溶けていく。
 叶えることの出来ない想いを抱くのは、どれだけ苦しい事なのだろう。
 必死に頑張っているのに結果が出せない事と、どちらが辛いのだろうか。
 揺れる水面は何も映し出さない。寄せたカップに息を吹きかけて、一口分だけ中身を注ぎ込む。
「……にがい」
 チョコレート色の液体は、私のお気に入りの配合で作ってくれたならばティースプーンに二杯、砂糖が入っているはずだ。なのに、舌に残るのは後味の悪い苦味ばかり。どろりと纏わりついて、簡単には消えそうもない。
 敵わない恋の味というのは、こんな感じなのだろうか。不意に浮かんできたそんな考えをほろ苦い液体と一緒に無理矢理喉の奥に流し込んで、カップを机に戻す。違う、これは罪悪感の味だ。プレッシャーを感じるのも、本番が近付いてきて焦るのも全部私の心が弱いせいなのに、私はどこかでレンのせいにしてしまいたがっている。そんな自分を無かったことにしたくて、都合のいい綺麗な言葉を吐き出している。……本当に、嫌な奴だ。
 部屋の空気が冷たいままでよかった。剥き出しの肌を刺すぴりぴりとした痛みに、頭が冷静さを取り戻していく。ペンを拾って問題を解き始めると、余計な感情はすぐに数式に塗りつぶされた。
 細い芯先が紙を引っ掻く音が不規則に流れる以外は元のように静かな部屋。さっきまでと違うのは、身体を包み込む暖かさが痛みを和らげてくれることと、ささくれ立っていた気持ちがほんの少しだけおとなしくなったこと、だろうか。単純作業しか出来ない機械みたいにただ黙々と問題を解き続け、区切りのいいところまで終わったところで漸く時計を見ると、日付はとっくに変わっていて少し驚く。除夜の鐘に気付かない位集中してただなんて……。
 そっと耳を澄ましてみても家の中はこの部屋と同じくらいしんと静まり返っていて、リビングの方にも人の気配はない。新しい年になったといっても、流石に一時を過ぎれば皆寝てしまうか。
――ごめん、レン。
 根を詰め過ぎないようにと心配してくれているのは解るけど、その言葉を守るつもりは、最初からなかったんだ。正月中は親戚で集まったりと余計な用事が多くて、なかなか勉強する時間が取れないから。今のうちに、やれるだけやっておきたいの。
 言い訳みたいに謝って、すっかり冷たくなってしまったカップをテーブルの奥に押しやる。結局、中身はほとんど残してしまった。朝になったら、レンに気付かれる前に片付けておかないと。
 凝り固まってしまった体をほぐそうと首を回していると、つい一時間ほど前に終わった去年のカレンダーが目に入って、折角だから気分転換でもしようと買っておいた新しいものへと取り換える。ぱらりと捲って無意識に確認するのは試験の日程。受験が全て終わるまでは、およそ二カ月だ。
 結果が出そろった時、私はどうしているのだろう。笑っているだろうか。――……レンは、笑って受け入れてくれるだろうか。
 紙の上の数字をいくら眺めても先の光景なんて浮かんでこなかった。諦めた様に息を吐くと、もう一頑張りするために席に戻る。
 夜明けの時は、まだ遠い。


◇◆◇
本番直前にやってくる正体不明の大スランプ期にもがき苦しむ受験生リンちゃん、のイメージでした。
こういう時期って何に対してもピリピリしてしまうと思うんだ…。リンちゃんはレン君の事が嫌いじゃないけど、恋愛対象としては見られないし優しくされるとイラッとしてしまうので普段は極力関わらない。寧ろそれどころじゃない。レン君はそれがちょっと寂しいしちょっと不満。一方通行な近親もイイヨネ!
タイトルの「夜明け」は文字通りの夜明けであり、「苦しみ(=受験期)から脱する」意でもあります。
因みに私は高校受験前日呑気にお絵かきして遊んでました。受かったからよかったものの……。
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お年賀だったもの

大切な人へ贈る手紙

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