1周年に間に合わなかった上、推敲も中途半端です。本当はお蔵入りさせるつもりだったけど、もったいないので投げます。久しぶりに挫折を味わった……orz

モジュール設定のお話。頂いたリクエストの青蘇を書くつもりが、色々付け足していく内に脱線してしまったなれの果てです\(^o^)/ヒィィ…
青蘇というよりは蘇青、ついでに藍黒っぽい要素も付け加えてみて、でも最終的に青黒藍蘇が仲良くしているだけに終わりましたどうしてこうなった。
モジュっ子に関しては頭の中で色々と妄想を広げているのですが、実際に書いてみると大分迷走してますね……。

読みにくい上に何が言いたいかわからない。そして無駄に長い。
色々と許せる方のみ続きからどうぞ。

12.9.2追記:続編出来たのでタイトルつけて移動しました。


Unbirthday Tea Party

『庭のツツジが満開になりました。お茶とお菓子を用意してお待ちしています』

 鉄からそんなメールが届いたのは、昨日の夕方の事だ。
 毎月の恒例行事であるお茶会のお誘い。蘇芳と鉄が育てる四季折々の草花を眺めるだけのこの集まりに、あたしと青は今日もお邪魔していた。
 日当たりの良い縁側に腰をおろして、淹れ立てのお茶を一口。鉄が「新茶なんですよ」と嬉しそうに言うだけあって、ほんのりと湯気を立てる緑茶はいつもより幾分か香りが良い様な気がする。急須の横の大皿には蘇芳お手製のよもぎ団子だ。緑色の餅から漂って来る独特の青臭さは実はあまり得意じゃないのだけど、あの子曰くこれが「春の香り」なんだとか。まぁ、味は美味しいから問題ないか。
 指先に残ったあんこをぺろりと舐め取ると、あたしは改めて二人の自慢の庭へと目を移す。
 ひと月前にこの場所から眺めた桜はすっかり緑の葉っぱに覆われていて、花壇のチューリップもぼろぼろと花弁を落としてしまったけど、その代わりに先月は見られなかった花の蕾があちこちで綻んでいて、ちらほらとしか咲いていなかったツツジも数え切れないほどの花をつけている。現実世界と同じように、ここの草木は毎日違った姿を見せるのだ。

 初めてここに来た時は、こんなものを育てて何の意味があるんだって思った。だってあたし達の仕事は歌う事が第一なんだし、ここにあるものは所詮電子情報だ、丹精込めて世話をする理由がわからない。実際、「花が見たいんだったら、綺麗に咲いたもののデータをインストールすればいいじゃないか」と提案した事もあるのだけど、ため息と共に憐みの視線を向けられるといった始末だ(主に鉄から)。……しょうがないじゃない、これが性分なんだもの。
 あたしと青が暮らしている家は、各々のプライベートルームとリビング、練習用の防音室と最低限生活スペースがあるだけだし、お邪魔する機会はほとんどないけれど、きっと他のモジュール達の家も同じようなものだろう。そもそも、人間の様な生活をする事自体がおままごとなんだし、余計なスペースは容量を食うだけで何の意味も成さない。こうやって庭を作ってわざわざ草木の世話までするなんて、二人は相当変わり者なんじゃないだろうか。
 そんな風に、ずっと思っていたのだけど――――


 残っていたお茶を飲み干してほぅ、とため息をこぼすと、花壇の前に立っている蘇芳と青を見遣る。
 二人はお茶にもお団子にも一切手をつけず、さっきから庭を巡ってばかりだ。花を見るなんておやつの後でもいいのになぁと思うのだけど、毎日世話をしている蘇芳としては、すぐにでもその成果を見て欲しいのだろう。
 因みにあたしも庭巡りに誘われたのだけど、ここはきっぱりと断っておいた。あの子は一旦はしゃぎ出すと落ち着くまでが長いし、そうなったらいつ解放してもらえるのかわかったもんじゃない。第一面倒くさい。
 青は……どうだろう。あいつは蘇芳のわがままにはだいたい付き合ってるし、まんざらでもないのかしら。……いや、その前に誘いを断るのすら面倒くさがってるという説もかなり有力だけど。

「こっちがあやめでこれがおだまき。すずらんもたくさん咲いたよー。あ、そろそろ散っちゃうんだけど、向こうに藤が咲いててすっごく綺麗なの!後で見に行こうよ青ちゃん!!」

 花壇に並ぶ色とりどりの花を指さしながら、蘇芳はこれは何という花だ、もうすぐ何が咲くのだと楽しそうに説明をしている。今の時期は植物の成長が盛んだし、あの子も張り切っているのだろう、いつもより元気の良さが2割増しだ。
 対する青は、蘇芳の話に時折思い出したかのように相槌を打つ以外はほとんど無反応。初対面の者には「冷たい」だとか「興味なさげ」だとかに見えそうな態度だけど、付き合いの長いあたしたちの間では、あいつが他人よりも二回りくらいテンションが低い事は周知の事実だ。誰も気にしちゃいない。
 二人はちゃっかり手なんか繋いじゃって(というか青が蘇芳に引っ張られてるだけだけど)、一見仲がよさげで微笑ましい。だけど、なんて言うんだろう……そう、あれじゃあ「天真爛漫な娘とその姿を見守る父親」だ。蘇芳は鉄やあたしと並ぶときょうだいに見えるのに、この差は何だ。本人達の性格のせいだろうか。

「ツツジ、綺麗に咲いたでしょ!」
「ああ、そうだな」
「こっちの濃い色も可愛いけど、私はこの薄桃色のが好きなんだぁ」

 青の手を離してツツジの前に駆け寄った蘇芳は、白、ピンク、薄ピンクと三色の花が咲き乱れる庭木の中から薄ピンクの花を二つ摘み取って、片方を後ろに立つ青に手渡す。
 ほわほわと可愛らしいその色は確かに蘇芳にお似合いだ……と、それ位の事は言ってやってもいいだろうに、相変わらずうちのバカはぼけーっと突っ立ってるだけだ。顔立ちだけはいいのに、どうしてこう気が利かないのだろう。咄嗟に相手を褒める言葉が出てくる分だけパンキの方がマシだ。ウザったいのが玉に瑕だけど。

「――でね、こうやって後ろから吸うと……」
「なっ!?……何やってるんだ蘇芳!!」

 ……と、どうでもいい事をぼんやり考えているうちに、滅多に声を荒げない青の妙に焦った様な声が聞こえて、はたと意識を引きもどした。どうやら蘇芳が摘み取ったツツジを口に咥えようとしたらしい。普段は殆ど表情の変化がない青が珍しく血相を変えて、蘇芳の手首を掴んでいた。その勢いで蘇芳の右手からツツジの花がこぼれ落ちる。

「あ、青ちゃ……っ、どうしたの?」

 強い力で掴まれて痛かったのだろう、微かに身をよじらせた蘇芳を見て、青は慌てて手を離す。力任せに動いてしまった事に対する罪悪感が一瞬浮かんだけれど、すぐに顔を引き締めて、蘇芳の華奢な肩にそっと手を置いた。

「いいか?一見可愛らしくて綺麗な花だが、ツツジには毒があるんだぞ。そんな風に無防備に口に入れて、もしもの事があったら……!」

 真剣に訴える青の顔をぽかんと見上げながら、蘇芳はわけがわからない、といった感じで首を傾げる。対照的な二人の表情が滑稽だ。

「えー、青ちゃん何言ってるの?毒なんてどこにもないよ」
「は?だから、このツ」
「それより、後ろから吸うと甘い蜜が出てきて美味しいんだよ!青ちゃんも試してみなよ」
「いや、それは……」
「はい、青ちゃんあーん」
「え……むぐっ!」

 青が油断した隙に蘇芳は再びツツジを摘み取って、反射的に開いた青の口にぐいっと押し込む。おぉ、予想外の早技。突然の襲撃に青は目を見開くけれど、蘇芳の手前吐きだすわけにもいかないのだろう。ものすごく微妙そうな顔で、渋々と口を動かした。

「……ほら、大丈夫でしょ?」
「……」

 ふわりと微笑んで顔を覗き込む蘇芳に、青は「信じられない」でも言いたげな表情だ。あるいは「裏切られた」だろうか。どっちでもいいけど。
 そんな様子をじっと観察してると、不意に青がこちらを向いた。……うん、言いたい事は大体分かる。でも知らない。
 べっと舌を出して視線を跳ねのけると、あいつもようやく何をされていたかに気付いた様だ。不満が口を飛び出すよりも先にどっと落ち込んでるあたりがあいつらしい反応だけど、ごめん、罪悪感なんて全く湧かない。
 そうやって一人勝手に葛藤してる青を放り出して、蘇芳は自分用のツツジをちゅうちゅうと吸っている。しかもやたら幸せそうな顔で。あの子は蜜蜂の生まれ変わりか何かなのだろうか。そして青、いい加減諦めなさい。そんな風にしょんぼりしたって事実は覆らないわよ。
 対照的な表情で薄桃色の花を咥えた二人は暫くの間蜜を堪能していたようだけど、それにも飽きたのだろう。蘇芳は用の済んだ花をぽいっと放りだし、「青ちゃん、次は藤見に行こう!」なんて叫んでる。……あぁ、そう言えばさっき見せたいって言っていたっけ。よくもまぁ飽きもせずに動き回れるものだ。そしてもちろん青に拒否権はない。
 蘇芳はぽかんとする青の手を取って、その小さな体のどこにそんな力があるんだって位勢いよく引っ張る。そしてそのまま全力ダッシュで駆け出した二人の後姿を見送りつつ、あたしは元気だなぁ、なんて思いながらあくびを零した。






「――で、またあなたの仕業ですか?黒さん」

 日溜まりの様な暖かい声に振り向くと、ついさっきまで周りの空気と同化していた鉄が、にっこりと微笑みながらあたしを見ていた。あぁそうだ、こいつもいたんだっけ。

「……何のことかしら?」
「青さんの言っていた事ですよ。どうせあなたが碌でもない事を吹き込んだのでしょう」

 いつもの事ですからね、という小さな呟きもしっかりと聞こえて来て、あたしは思わず口を尖らせる。その「何でもお見通しですよ」とでも言いたげな表情、気に食わないなぁ。
 確かに、「ツツジには毒がある」と口から出まかせを教えたのはあたしだ。鉄からのメールを読んでいる時に「あんたはぼーっとしてるから、うっかり花を食べたりなんかしちゃダメよ」と冗談のつもりで言ったのだけど、あいつは基本的に言われた事は全部信じるタイプだから。……何でこんな事言ったかって?暇つぶしよ、暇つぶし。

「青さんまた落ち込んでましたよ。いいんですか?あんなにもあなたの事を信用しているのに」
「いいのよ、面白いし。大体、バカみたいに鵜呑みにする方が悪いのよ」
「……飽きませんね、あなたも」
「だって、あんな風にコロっと騙されてくれるヤツ、なかなかいないでしょ」
「まぁ、その点に関しては僕も同意見です。青さんは純粋すぎますからね。いたぶり甲斐はあります」
「……あんたって、考える事結構えげつないわよね」
「褒め言葉として受け取っておきましょう」

 何食わぬ顔でさらっと言い放つ鉄に、あたしは思わず顔をしかめる。……そうだ、こいつは温厚そうなくせして平気で毒を吐くんだった。いい加減慣れたけど、うかつに近寄りたくない相手ナンバーワン候補かも。

「――あぁ。でも、今回は完全に間違っているわけでもないんですよ」
「は?」
「ツツジには毒をもつ品種も存在するんです。蘇芳が蜜を吸うのが好きなので、家では安全なものしか植えていませんが……」

 鉄はずずっとお茶を啜りながらそう補足すると、「あぁ、やっぱり新茶は香りが違いますねぇ」と独り言をこぼしてそっと目を閉じた。話す相手がいなくなったので、あたしも庭の方を向いて目を閉じる。
 どこから吹いてくるのだろうか、草の香りを含んだ風が、頬と髪をそっと撫でる。遠くから誰かさんの騒ぎ声が聞こえてくる以外は本当に静かで、こう……名前が思い出せないのだけど、カコーンって音の鳴る竹シーソーが似合いそうな雰囲気だ。何でここには無いんだろう。今度提案でもしようかしら。

「……来月は紫陽花が見頃を迎えます」

 そんなどうでもいい計画を頭の中で巡らせていると、不意に鉄が口を開いた。

「紫陽花は雨の中が一番映えるでしょう。お天気が悪いのは煩わしいかもしれませんが、普段とは違った趣もあって楽しめると思いますよ。……また、いらしてくれますよね?」

 鉄にしては珍しく弱気な様子で尋ねられて、少しだけ居心地が悪くなる。なんか、お腹の辺りがむずむずする様な……。

「……そんな事、わざわざ訊かなくてもわかってるでしょ」

 何となく腹が立って顔も見ずにそう突き放すと、後ろからふっと笑ったような気配がした。蘇芳も喜びます、なんて呟きと一緒に。……だから何でそうなるのよ!?でもまぁ、なんか元気になったみたいだし、良いか。

「黒さん、次はどんなお菓子をご希望ですか?」
「あたしあれ食べたい!あんこで出来てて、カラフルで、お花の形とかしてるヤツ」
「練りきりですね」
「んー、たぶんそう。……あ、紫陽花の形とかいいんじゃない?可愛いし」
「……紫陽花を見ながら紫陽花を食べるんですか」
「いいじゃない、ふーりゅーで」
「そういうのは風流とは言わないと思いますが……わかりました、用意しておきます」

 練り切りは難しいんですけどねぇ、なんて呟きが聞こえてきたけど、そんな事知らないわよ!食べたいもの訊いてきたのはそっちじゃない。……まぁ、こうやって小言もらしつつも、どうせきっちり作るんだろうけど。来月が楽しみだ。
 お茶のお代わり淹れてきます、と立ち上がった鉄を片手を上げて見送り、遠くにいる蘇芳たちに視線を向ける。薄紫色に染まる藤棚の下、蘇芳は地面に落ちた花を掬うと、バンザイするみたいにバッと両腕を広げていた。藤吹雪をまともに食らった青の頭は花まみれだ。風がさっと吹き抜けて、紫色の粒を舞い上がらせる。



 植物を育てる事も、集まってお茶をする事も、本来あたし達に与えられた役割だけを考えたら意味のない行動だ。感情を育てるには少しは役立つのかもしれないけれど、必要ってほどでもないし。むしろそんな事をしている暇があるんだったら、もっと歌の練習をするべきなんじゃないかって思っていた。
 でも――――

「黒ちゃーん、こっちおいでよー!綺麗だよー!!」

 ―――…あぁ、そうだ。何だかんだ言って、あたしも青も、ここで過ごす時間が好きなんだ。
 蘇芳がいて、鉄がいて。お茶とお菓子がおいしくて、全部の名前はわからないけど、毎月違った花を見るのも楽しい。こんなことしたって歌がうまくなるわけじゃないのに、今では4人で過ごす時間が少しでも長く続くといいなぁ、なんて思っている。大した変化だ。
 そしてこうやってみんなで集まるのに一役も二役も買っているのだとしたら、この庭の花たちも、きっと無駄なんかじゃなかったんだ。

「黒ちゃーん!!」
「はいはい、今行くから、ちょっと待ってて!」

 遠くの二人にも聞こえるように声を張り上げ、静かに手を振り返す。
何をするのが大切かなんて考えたってよくわからないんだし、自分が楽しめるよう、好きに行動すればいいや。

 とりあえず、二人のところに行く前に、お茶のお代わりをもう一杯。
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ひとつ大人になりました☆

1周年リクエスト企画

comment iconコメント ( -1 )

No title

てっちゃんラスボス説。いいぞいいぞ!
青黒藍すおだとクロちゃんが一番しっかりしがちだけど
それを上回るてっちゃん…ステキ。
クロ鉄と青すおもいいですねぇ。
その場合、青さん父役みたいですがw

お庭ネタやお花ネタは季節のたびにちょこちょこっと
書く方も読む方も楽しめるとおもうので、
アジサイ編も、ぜひ^^

名前: にょん [Edit] 2012-05-16 21:03

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