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2本目はレンリンです。
(シチュ:公園、表情:「目を瞑る」、ポイント:「お姫様抱っこ」、「お互いに同意の上でのキス」)

 華やかな結婚式。王子様の隣に立つヒロインは、これ以上ないってほど幸せそうな顔で微笑む。誰もが羨むハッピーエンドだ。
 有名な映画製作会社の新作であるファンタジーアニメ映画は、内容こそ子供向けだが、来場する人たちの年齢はそこまで低くない。
 おとぎ話が大好きな恋人――リンも当然この日を楽しみにしていて、どこが良いのかさっぱりわからないこの陳腐なストーリーに目をキラキラと輝かせていた。……まぁ、リンが楽しんでくれてるんだったら何だっていいけど。

 王子様とお姫様が結ばれてめでたしめでたし。それで終わってくれたんだったら、まだよかった。
 問題はそのラストシーンだ。
 結婚式の最中、王子様はお姫様を抱きかかえて(所謂「お姫様抱っこ」ってやつだ)、そのまま誓いの口付けを交わしたのだ。おとぎ話だったら別段珍しくもないであろうシチュエーション。そう、普通だったらありふれたシーンとして流してしまえるのだ。
 ただ、相手はリンだ。そう簡単にはすまされない。
 休憩がてら立ち寄った公園のベンチで、リンは映画の余韻が冷めないとでもいう様にうっとりとしている。

「映画、素敵だったねぇ!」
「……あぁ、そうだな」
「最後感動しちゃったぁ。やっぱお姫様にはお姫様抱っこが似合うよね」
「えー、あー……そうなんじゃね?」
「……ねぇ、レン!」

 ――あ、何かすげー嫌な予感。

「レンもお姫様抱っこやってよ!!」

 ……やっぱり!







「えっと……本当にここでやんの?」
「大丈夫、人いないし誰も見てないよ」
「いや、そういう意味じゃなくて……それも大事だけど」

 キラキラと輝く視線を全身に受けながら、俺は小さくため息をこぼす。リンからの無茶ぶりは付き合い始めてからの数カ月で慣れたつもりだったけど、毎回その内容には頭を悩まされる。
 遊具の殆ど無い公園には子供たちも興味を示さないのか、ベンチでくつろぐ俺たち以外に人影は見当たらない。誰が見ているわけでもないから何をしようと関係ないというリンの主張は理解できないでもないが、いつ人が通るかもわからないこの状況で、そんなこっ恥ずかしい事は出来ればやりたくない。
 ……そう思っていても、断る事だって出来ないんだ。結局は、彼女の喜ぶ顔が見たいから。

 はぁ、と息を吐きだして、リンの膝と背中に手を添える。膝をついてそっと抱き寄せると、大して筋力のない腕に一気に体重がかかった。そして――

「ふんっ―――――――!!!」

 歯を食いしばりながら足の裏に思い切り力を入れると、ゆるゆると、不安定ながらもリンの身体が持ち上がった。……だ、大分しんどいです……!!
 プルプルと震える腕で必死に堪える俺の心の叫びも空しく、リンはあろう事か腕の中でキャッキャとはしゃぎ出す。

「わーい!レンすごいねぇ、お姫様抱っこだよ!王子様みたい!!」
「うわバカ、危ないから動く……うぉっ!!」

 倒れそうになる体を、すんでのところで立ち直す。てかやばい、これ喋ると力抜ける……!!
 何とか踏みとどまって安心したのもつかの間、さらなる爆弾が投下された。

「ねぇレンー、次はチューだよ!」
「!?」
「映画でもやってたじゃん、お姫様抱っこチュー!やってよ!!」
「え、えっと……」

 ちょっとまて、リンは本気であのシーンを再現するつもりなのか!?いやキスはもう何回かやった事あるから気にならないけど……ってそういう問題じゃなくて!この体制からするのか?マジで!?て、ちょっと待てもう目瞑ってるし……!!
 腕の力はもはや限界を迎えつつある。でもちゃんとやってやらないとリン拗ねるかもだし……あぁもう、仕方がない!
 ぐっと歯を食いしばって、目を閉じたままじっと待っているリンの顔へと自分の唇を近付ける。そして――

「……レン、何か顔怖いよ」
「へ?……って、うわ…………」

 一瞬の油断。それが命取りだった。
 がくんと下がる腕、リンの小さな悲鳴。辛うじて抱き寄せたものの、重心を失った身体はいとも簡単に崩れ落ちて――――


「…………ってぇぇ……」

 思い切り打ちつけた背中がじんじんと悲鳴を上げる。倒れる瞬間に身体を捻ったからリンに怪我はないと思うけど、なんて言うか……すげぇ情けねえじゃん、これ。

「レン、怪我ない?」
「……だいじょーぶ」
「……レン、何か怒ってる?」
「別に怒ってなんかねーよ。……ただ、俺ってカッコ悪ぃなって思って……」

 女の子一人抱き上げる事も満足に出来ない。王子様みたいだなんて、笑い話もいいところだちくしょう!
 むっと俯いた俺の頭を、リンの手が優しく撫でる。

「……なんだよ」
「王子様じゃなくっても、レンはかっこいいよ?」
「そんなお世辞言ったって嬉しくなんかねーよ」
「お世辞じゃないよー」

 リンはニコニコと笑いながら俺の頭を撫で続ける。子供扱いされてるみたいでなんか悔しかったから、その手を振り払ってリンの頬に手を添えた。
 じっと瞳を見つめると、ようやく察したのか、リンが目を閉じる。ふっくらとしたほっぺも光に透ける眉毛も可愛いなぁと思いながら、そっと自分の唇を重ねた。



 因みに、その日の夜から筋トレに励む事をひっそりと決意していたのは、ここだけの話だ。


◇◆◇
非力なレン君を応援し隊。
レンリンだとどうしてもギャグかコメディにしたくなる不思議……。でも、これ今まで書いた話の中で一番いちゃついてると思うんだ。
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リクエスト終了

今年も遅刻したキスの日その1

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