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1周年リクエスト消化第2弾。今回は伽羅さんから頂いたリクエストで、DIVAモジュールの陽炎とパンキッシュです。
リクを頂いた当初は想像もつかなかった組み合わせですが、自分なりに妄想を広げてみたら意外とハマってびっくりしている。因みに当家陽炎さんはヤンキーで、パンキさんはウザくて掴みどころのない自由人。
相変わらずアクの強い我が家設定で、尚且つカップリングではありませんが、楽しんでいただけたら幸いです。リクエストありがとうございました~(´▽`)



Lone Wolf Cry Wolf

 他人と顔を合わせたくなくて、出歩くのはいつも自分の領域周辺か真夜中だけだった。
 笑い声も、明るさに溢れたあの空気も、私にとってはただ居心地の悪いものでしかない。
 生温い優しさに包まれて平然としている「同族」達の姿はただ苛立ちを募らせるだけで、そんな奴らを避ける様に、一人山の奥へと籠った。
 夜は好きだ。刃物を突き付けられているような静けさも、不気味なくらい美しく輝く月も、全てがこの心を満たしてくれる。
 闇に紛れる様に荒野を歩く。携えるのは自分の影のみ。
 広い世界に、ただ一人。
 自分の存在を確かにするためなら、締め付けられるような胸の痛みすらも、愛おしいと思った。


 だから、街に出たのは本当にただの気まぐれだった。
 誰かに会う可能性を考えなかったわけじゃないが、同じ風景にもいい加減厭きてしまって。少しふらついたらすぐに戻る、そのつもりだった。
 比較的人通りの少ない路地を一人歩いていると、間の悪い事に向かい側から見知った顔がやってきた。甘ったるそうな気配を漂わせるアイドル女と、いつも不機嫌そうにしている白黒パンク女だ。
 このまま通り過ぎてくれればいいものの、二人は私の姿に気付いて、驚いた様に立ち止まる。無視して通り過ぎようにも、こっちからわざわざ避けるのは癪だ。くそっ、何でこんな所で……!

「……へぇ。あんたがこんな所に出てくるなんて、珍しい事もあるものね。どういう風の吹きまわし?」

 じろりと目を細めながら、パンク女が訝しげに問う。その視線に含まれているのは、好奇か、あるいは――。
 こみ上げてくる苛立ちのまま、私は低く吐き捨てる。

「……貴様には関係ない」
「その態度も相変わらずね、陽炎。そんなだから皆あんたの事を避けるのよ。いい加減改めたら?」
「余計な御世話だ!」

 ちくしょう、こんな道通るんじゃなかった……!
 舌打ちをしながら二人を睨みつけると、パンク女は呆れたように肩をすくめる。

「あんたがどんだけ機嫌悪かろうと私たちには関係ないけど、八つ当たりはやめてよね。折角の楽しい気分が台無しじゃない。ね、チア」
「えぇっ!?えーと……」

 いきなり話を振られて驚いたのか、アイドル女はおろおろと視線を彷徨わせ、こちらの様子をちらりと窺う。
 何なんだ!先に問いかけたのは、貴様らの方だろう!?そんな風に思うのなら、最初から放っておけばよかったじゃないか……!

「あ……」

 目が合った瞬間、アイドル女は怯えた様にびくりと肩を竦ませる。わかりやす過ぎるその態度に苛立って睨みつけてやると、隣にいたパンク女がそいつを守る様に一歩前へ出た。差し詰め「この子に手を出したら許さない」といったところだろうか?アイドル女の方は、そんなパンク女の肩越しから戸惑った様にこちらを覗き見ている。ふん、「輝かしい友情」ってやつか。吐き気がする……!
 互いに一歩も引かず無言で睨み合っていると、暫くしてパンク女がため息を吐いた。呆れたように一瞬目を閉じ、後ろを振り返る。

「……チア、行くわよ」
「で、でもリアちゃん……」
「いいから」

 アイドル女の手を無理やり引くと、パンク女は速足に私の横を通り過ぎていく。慌てた様について行くアイドル女。背後から二人分の足音がカツカツと響き、やがて聞こえなくなった。

「……くそっ」

 ……違う、取り残されたんじゃない。あいつらが先に私の前から逃げ去ったんだ。だから、こんなのどうってことない……!
 唇を噛み締めながら、込み上げてくる悔しさを胸の奥へと押し込める。碌でも無いものを見せつけられたせいで、気分が悪かった。あんなもの、お互いに依存し、甘えているだけじゃないか!くだらない……本当にくだらない。慣れ合いなんてものは心の弱いものがするものだ。私にはそんなもの必要ない……!

 二人が過ぎ去った背後を振り返る事すら忌々しくて、ただ足元に視線を落とす。そうだ、私はあいつらとは違う。他人を頼って、その生温い関係に縋る必要はないんだ。
 私は私の為に生きる。誰の力もいらない。だから、あの二人を「羨ましい」だなんて―――…

 脳裏に浮かんだあり得ない感情に、私は慌てて首を振ってそれを払い落す。違う……ちがう!私は一人で十分なんだ……!!
 そんな心の中の叫びも、私にとってはただ虚しさを増すだけで。湧きあがる悔しさを吐き散らかす様に、落ちていた小石を思い切り蹴り飛ばした。





 結局、そのまま出歩く気分にもなれなくて、私は早々に自分の住んでいる領域へと帰ってきた。
 好き放題伸びた草。色の落ちた鳥居。枯れかけの葉を纏う樹に囲まれたこの社が、私の住みかだ。
 季節の変化など設定されていないここは、常時晩秋の景観を維持している。といっても、生憎紅葉や銀杏といった樹はこの辺りには生えていないので、秋の鮮やかさとは無縁だ。おかげで、こんな薄暗い場所に近寄って来る物好きな者などいなかったが、こちらとしてはむしろ好都合だった。仮に誰かが来たとしても、追い出すだけだ。

 軋む階段を上って普段寝泊まりしている拝殿へと入りこむと、鼻を掠めるのは古びた木の香り。始めこそ気になったが、今では落ち着きすら感じている。誰にも邪魔されず、私が最も安心できる場所だ。
 燭台に火を灯して壁にもたれかかり、はぁ、と大きくため息を吐く。
 今日はやけに疲れた。気分転換に出かけたはずなのに、結局は気分を害するだけだったなんて。それもこれも、皆あいつらのせいだ……!
 脳裏をかすめたあの二人の姿に舌打ちをし、乱暴に腰を下ろしたその時。

 ガタリ、とどこからか物音が聞こえた。

「誰だ!?」

 反射的に立ち上がり、傍に立て掛けてあった愛用の薙刀を掴むと、物音のした方へと構える。
 鼠にしては大き過ぎる。まさか、私が留守にしている間に誰かが入り込んだのか……!?

「出て来い。……来ないならこちらから行くぞ」

 低く忠告をしながら一歩踏み出す。すると―――…

「待った待った!今ちゃんと出るから、切りかかるのだけは勘弁してくれよ」

 ばたばたと足音を響かせて柱の奥から出てきた人物に、私は唖然として構えた腕を下ろしてしまった。
 若干引き攣った様な笑顔で「降参」のポーズをとる男。すらりとした身体を真っ黒な衣服に包んだそいつは、「パンキッシュ」と呼ばれる、私たちの同族の一人だった。

「な……なぜ貴様がここにいる!?」

 予想外の人物の登場に、頭の処理が追い付かない。いつからここにいた!?いやそれ以前に、どうやってこの場所を突き止めたんだ?目的は―――…
 自分のうかつさに唇を噛み締めていると、そいつはわざとらしく両手を広げて、肩をすくめて見せた。

「いやぁ、散歩していたら偶然迷い込んじゃってね」
「嘘をつくな!」
「まっ!?……い、いきなり切りかかるなんて、随分とアツい歓迎だねぇ。でもちょっと落ち着こうか」
「黙れ。貴様の戯言に付き合ってられるほど、私は暇じゃないんだ。今すぐここから出ていけ!!」
「酷いなぁ。折角なんだから、少しくらいもてなしてくれても」
「貴様への持て成しなんてこれで十分だ!」

 へらへらと浮かべられた笑みが気に食わない。一刻も早く追い払おうと思い切り薙刀で切りかかってみたが、想像以上に身軽なこいつは、私の一振りをいとも簡単にかわしてしまった。くそ、本当に気に食わない奴だ……!
 パンキッシュは斜めから切りかかった刃をひょいっと避けながら、挑発するようにこちらを振り向いた。

「おー、危ない危ない。そんな殺気立たなくても、何も悪い事はしてないって」
「その言葉が信用できないと言っている!」
「うーわー、傷つくなぁ。そもそもキミの家だと知ってたら、流石のボクでも勝手にお邪魔したりはしなかったって。だからこれは偶然で事故です、スミマセンでした」

 誠意も何も全く感じられない口調。表情も相変わらずへらへらとしたままだ。私はこいつにバカにされているのだろうか?

 他の同族と関わる事が少ない私でも、こいつの噂くらいなら嫌でも耳にしている。
パンキッシュ。いつもひょっこりと現われてはその場にいる者にちょっかいを出し、颯爽と逃げ去る問題人物だ。
 その行動から鬱陶しがられる事が大半だが、本人はさほど気にしていないらしい。いつもへらへらとしていて、何を考えているのか全く分からない。信用しろという方が無理な要求だろう。
 実体がつかめない底なしの沼の様な存在。それが、私がこいつに抱いた印象だ。

 一言で言ってしまえば、私はこいつが大嫌いだ。
 わけのわからない行動が気に障るのはもちろんだが、自ら進んで他の同族の輪に入り込もうとする姿が私とはあまりにも正反対で、見ていて苛々する。
 相手が誰であろうと構わない。恐らく、追い返される事すらも楽しんでいる。
 会話をした事のない同族などいないのではないかとすら思えるほどに、こいつは多くの者と関わりを持っているのだ。
 ある者は適当にあしらう。またある者は鬱陶しがる。反応はまちまちだが、こいつの周りにはきっと、絶えず誰かがいるのだろう。

 私には、そんなこいつが理解できない。



「……もう一度だけ問う。何故ここにいた。ここで一体何をしていたんだ!?」

 薙刀の柄をぎゅっと握りしめ、改めて目の前の男に向けて構え直す。見られて困る様な物など置いていないから盗みの心配はないが、他人がここにいる状況自体が私にとっては得体の知れないものだ。加えて相手がこの男ともなると、素直に無罪放免とはいかないだろう。

「だから何度も言っているだろう、偶然だって」
「ここは『偶然』で済まされる様な場所ではないはずだ」
「まぁ、確かにこんな薄気味悪い山の中、好んで来るような場所じゃないね。でも、『あーたまにはいつもと違う場所を散策してみたいなぁ』なんて気分が変わる事、キミにだってあるだろう?」
「それは……っ」

 自分も同じような行動とってしまった手前、言い返す事が出来ない。
 ぐっと口ごもってしまった私を見て、パンキッシュは嬉しそうににたりと笑った。

「ほぅら、納得してくれただろ?ボクはただ、普段は立ち寄る事のないこの山の中に何があるのか気になって、ひょっこり遊びに来ただけなんだよ。そうしたら、なんと面白そうな家が建っているじゃないか!せっかくだから中を見せてもらおうと声をかけてみたけれど、返事は一つもなかったし、誰も住んでいないのかなぁと思って、勝手にお邪魔させてもらったというわけだ。……キミは?一人でどこかに出かけていたのかい?」
「五月蠅い!なぜ貴様に私の行動を話さなければならないんだ」
「……陽炎。人前には滅多に姿を現さず、どこに住んでいるかも不明。顔を合わせても睨みつけられるか怒鳴られるだけで、近寄りがたいモジュールの筆頭として挙げられている。そんな噂のたっている人物が目の前にいるだなんて、色々と訊いておかないと損じゃないか」
「なん……」
「こうやってキミと一対一で話す機会なんて今までなかっただろう?だから、これを機に仲良くしたいなぁ……なんて。キミだって、気が向いた時に話す相手が一人くらいいたって、別に困りはしないだろ?大丈夫、キミとボクはきっと相性いいよ」

 そいつはそう言うと、にっこりと笑って、握手を求める様に手を差し出した。
 ……どういう意味だ。ただの好奇心か?それとも、同情でもしているのか……?
 ふざけるな……ふざけるな!!相性?バカな事を言うんじゃない!誰とも関わりを持たないのは私の意思だ。それを他人にとやかく言われる筋合いなどない。仲良くだなんて、そんなもの、余計な御世話だ……!!

「ほら、だから手始めに」
「五月蠅い……うるさい!なぜ貴様なんかと仲良くしなければならないんだ!わざわざ私と関わらなくても、貴様には親しいものが沢山いるだろう。こんなヤツ放っておいて、さっさと他のモジュール達の所に行けばいいじゃないか……!!」

 苛立ちをぶつける様に叫んだ声は、不覚にも掠れてしまった。
 驚いた様にぱちぱちと瞬きをしていたパンキッシュは、やがて私を憐れむ様にふっと笑う。

「……キミはいったい何に怯えているんだい?」
「なん……だと?」
「他人から距離を置いている癖に、随分と未練があるんだね。ボクにはそんなキミが、酷く寂しそうに見えるよ」
「黙れ!!」

 言葉を遮る様に叫ぶと、目の前で悠然と語る男の喉元に刃を向ける。
 ここは私たちの存在意義の要だ。掻き切られも死ぬことはないだろうが、歌う事はもう叶わない。いけすかないこの男の顔が絶望に染まる姿は、さぞかし滑稽だろう。やかましいこの口も塞げて一石二鳥だ、丁度いい。
 薄暗がりの中、燭台の炎を映した刃がぬらぬらと光る。
 冷たい刃先を突き付けられ、手を動かせば簡単に切り裂いてしまう事も出来るこの状況に追い込まれれば、普通だったら怖れを感じるだろう。
 なのに。こんな状況でもなお、こいつは穏やかな微笑みを絶やさない。
 戸惑う私に構わず、パンキッシュは言葉を続ける。

「ボクは最初、キミとボクは似た存在だと思っていた。孤独を愛し、他人に自分の境界を踏みこませることを許さない。表面上は確かにそれで間違ってはいなかったようだけど……本心の方は違ったようだね。キミの言葉を聞いて考えを改めたよ」
「……どういう意味だ」

 似た存在?こいつが、私と……?あり得ない!だってこいつは、好んで他人と関わりを持っているじゃないか。一人でいる姿なんて想像もつかないだろう。
 ……そうだ、こいつの言う事なんか信用できない。この開けば出鱈目しか出てこない口で、私をからかっているだけなんだ。騙されない。私はこんな奴に騙されたりはしないぞ……!!
 押し黙る私をしばし眺め、攻撃する気配が無いと判断したのか、パンキッシュは棟を手で押して刃を首から除けると、また憐れむ様に―――…いや、困った様に、か?微笑んだ。

「……止めておくよ。今言ったって、キミは怒るだけだろうし。これ以上ここにいたら本気で殺されかねないし、今日の所はこの辺で退散するよ。次はもっとじっくりお話したいなぁ」
「二度と来るな!!」
「それはつまり『待ってます』って事でいいのかな?嬉しいよ、そう思ってもらえて」
「貴様……!」
「あはは、冗談だよ!じゃあまたね!」
「話を聞いていたのか!?あ、この……っ!!」

 最初から聞く気なんてなかったのだろう。男はひらひらと手を振りながら出口へと身を乗り出すと、あっという間に立ち去ってしまった。しんと静まりかえった空気に、胸の奥がチクリと痛む。

「……くそっ!!」

 ふざけるな……!何が「またね」だ。誰も貴様など歓迎しない。人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!私はここで一人、静かに―――…

『ボクにはそんなキミが、酷く寂しそうに見えるよ』

 違う……寂しくなんかない!私の事を知りもしないあいつに一体何がわかるというんだ!ふざけるな……ふざけるな!!

 苛立ちを紛らわせる様壁に打ちつけた拳は、じんわりと熱を持って、やがて心と呼応する様にズキズキと痛みだす。
 あんな不愉快な出来事などさっさと振り払ってしまいたいのに、男の言葉と表情は、暫くの間なかなか離れてくれなかった。


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あとがきとか

リク①

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